2000年度版
 
   

2000年12月23日  アメリカリウマチ学会の報告 第5回
一般演題では各種の項目が発表されていました。大腸クロ−ン病、あるいは潰瘍性大腸炎などでは線維筋痛症がよく起こるようです。発表者に腸疾患合併の関節炎と間違うことはないかと質問してみましたら、そういう可能性は否定はできないし、実際にあり得ますという答えでした。

また、糖尿病でも線維筋痛症が10数%に合併しているという発表がありました。

印象に残ったのは、N.L.Rhodus医師の発表です。線維筋痛症の患者さんでかなりの人が口腔の乾燥症状を訴えているという報告でした。私も以前からそういう印象を持っていましたので、克明に聞いてみましたら、将来、シェーグレン症候群になる可能性があるようですね、という答えでした。また、リウマトイド因子が陽性であったり、軽度、抗核抗体が陽性である症例をよく経験するという回答でした。地球の裏側に来て、やっと自分と同じような考え方の人と巡り会うのも、なにか不思議な感じがするとともに、もう少し日本でも理解してくれる人がいても よいのにと思いました。

講習会には医師以外にも研究者や専門の看護婦も出席していました。隣に座った白人女性は、ケースウエスタンリザーブ大学の研究者でした。ケースウエスタンリザーブ大学は私が1991年に数カ月間、日本リウマチ財団の基金で短期留学をしていた大学です。その大学のリウマチ学のモスコビッツ教授のところに9年前に勉強していた、と言うとびっくりしていました。

モスコビッツ教授 (Prof. Roland. W. Moskowitz)は2000年のアメリカリウマチ学会の金賞(年に1人、功労者に与えられる)をちょうどその学会で受賞することになりました。

モスコビッツ教授の書かれた教科書には膠原病の初期には結合織炎(fibrositis、現在は,線維筋痛症候群、fibromyalgia)の症状が出る事があると記載されています。しかし、私が1991年に渡米したときは、あまり注目されていなかったですね、と彼女に言うと、あのころ(1991年)はまだアメリカでも、皆、気づいていなかったといっていました。しかし、その時点でも、ケースウエスタンリザーブ大学のリウマチ科の外来では、ときどき、その診断名が出ていました。


Prof. Roland. W.Moskowitz

アメリカリウマチ学会の時のDr. Daniel J. Clauwのfibromyalgiaの講演がACRのHPで聞く事ができます。医療関係者の方は聞いてみたらいかがでしょう。

     http://www.audio-digest.org/cgi-bin/start/acr/philadelphia/main.html

   State-of-the-Art Lecture:
   Fibromyalgia: Advances in Understanding and Improvements in Management
   Daniel J. Clauw, MD
   Georgetown University Hospital
   Washington, D.C.



12月13日  アメリカリウマチ学会の報告 第4回
線維筋痛症候群の講演会の続きをお話します。線維筋痛症は何故起こってくるのか?という問題は解明されたわけではありませんが、遺伝的素因はあると考えられています。かといってそれがすべてではなく、それまでの人生のいろいろな事象が影響してくるようです。講師が、悪影響を与える事象として挙げていたのは以下のものです。

   新生児期の疼痛       (neonatal pain)
   小児期の病気        (childhood illness)
   幼児虐待          (child abuse)
   十代における困難      (teenage turmoil)
   多数回にわたる手術     (multiple operations)
   片頭痛            (migraine)
   子宮内膜症         (endometriosis)
   鬱的状態          (depression)
   過敏性大腸炎        (irritable bowel syndrome)
   度重なる外傷        (repeated injuries)
   心的外傷後ストレス障害  (PTSD: post-traumatic stress disorder)
   急性外傷          (acute injury)
   全身性の炎症性疾患     (systemic inflammation)

最近、日本でも注目されている幼児虐待などは、線維筋痛症の立場からみても、その個人の将来に悪影響を与えることになりますね。鬱状態も線維筋痛症を起こすと考えられています。(精神医学あるいは心療内科では、鬱病患者さんの疼痛は鬱病の症状のひとつにいれられているのが一般的です。)

また、疼痛の分類について分かりやすい説明もありました。

1)感覚受容器からの疼痛(Nociceptive Pain)
      これは普通の関節炎、たとえば、変形性関節症などに由来した疼痛です。
   一般に考えられている痛みです。

2)神経由来の疼痛(Neuropathic Pain)
      椎間板ヘルニアなど軟骨や骨の突出が神経線維を刺激して起こる痛み。

3)交感神経性の痛み(Sympathetic Pain)
     一般の方には聞き慣れない病名かもしれませんが、
      反射性交感神経性ジストロフィー(RDS: reflex sympathetic dystrophy)
      の場合に起こる疼痛。この病気では骨の萎縮や皮膚の異常もみられます。

4)中枢神経の中で感じる疼痛(Central Sensitization)
      これが線維筋痛症の疼痛であると考えられます。
   感覚受容器を通さない疼痛(Non-nociceptive pain)という考え方なのですね。

一般に痛みというのは身体各部の炎症や刺激が痛覚受容器に伝わり、その刺激が脊髄を上行して、脳に入って行くというのが通常の疼痛の考え方です。しかし、線維筋痛症の痛みはその経路ではないのです。

一般演題のなかで、線維筋痛症の患者さんの頚椎レントゲン写真で、頚椎の脊柱管狭窄症がみられることがあるという発表がありました。その発表者に『私はかつて整形外科所属で、今はリウマチ科です。頚椎の狭窄症がある線維筋痛症の患者さんに手術を勧めますか?』と質問しました。即座に『頚椎の手術はお勧めできません。』という答えが帰ってきました。


12月7日 <短信> ビデオの注文について
前回、線維筋痛症の体操のビデオを御紹介しました。そのビデオ会社から正式にリンクの希望のメールが届きましたので、連絡先を記します。ホームページから注文できるようになっていますので、御覧ください。線維筋痛症のみではなく関節症の患者さんにも効果があると宣伝されています。

videoの名前:
   "Pathways to Better Living with Arthritis and Related Conditions."
URL:
     http://www.mobilityltd.com

会社名:
   Mobility Limited
電話:
   1-(805)772-9253
担当者:
   
shsh@mobilityltd.com


11月30日 アメリカリウマチ学会の報告 第3回
一般の患者さんは、線維筋痛症の何かあたらしい治療法が見つかったかどうかを知りたいと思うでしょう。私のクリニックにかかっている重症の患者さんに『アメリカでは、何か新しいお薬が見つかったんでしょうか?』ときかれましたが、答えは『No』です。薬については抗鬱剤あるいは精神安定剤を使用するのが、一般的です。症状の強い患者さんで、薬物療法の効果が見られる方は30%くらいでしょう。

軽症の場合は薬がなくても良くなってしまいますが。なかなか薬だけではすべての患者さんには対応できないのです。そういう場合、以前から言われていましたが、教育とリハビリテーションです。今回、特にそういう発表が多く、目を引きました。また、原発性線維筋痛症にはステロイドの内服は長期的には効果が無いと言われています。

講演での内容ですが、教育とは患者さんが線維筋痛症の病気自体をよく知ること。そして、ストレスや不安の元となる原因を探り、対処の仕方を自分で身につけること。認知行動療法(Cognitive behavioral therapy)と呼んでいます。

線維筋痛症の患者さんはリウマチ科の医師に病名を告げられても、聞いた事も無いし、本にも出ていないし、まず最初は、病名自体を拒否し、信じません。それから、再び不安になって心身ともに不安定な状態になります。その葛藤からいよいよ病名と状態を受け入れ、最後に積極的に病気を克服しようとなさいます。

アメリカ、ヨーロッパでは最近リハビリテーション医学でもこの病気がクローズアップされているようです。治療体操のビデオがアメリカ関節炎財団から発売されています。私も1本購入してきました。係の人の説明ではヨガをベースにした体操だと言ってました。私が、ヨガでは身体に無理がかからないですかと聞いたら、患者さんが簡単にできるように、元のヨガよりやさしくしてあり、ゆっくりとリラックスできるものだと言ってました。持ち帰って見てみましたが、なかなかよくできていると思いました。興味のある方はアメリカ関節炎財団に問い合わせたら如何でしょうか?
アメリカ関節炎財団(Arthritis Foundation) のURLは下記の通りです。  
    http://www.arthritis.org/

そのほか、太極拳、エアロビクスも良いようです。ただし、動きの激しいものは疲労感の強い患者さんには困難ですね。運動療法の発表をしたKing先生はカナダの大学院の先生でしたが、ゆっくりした体操や、ウオーキングでも毎日少しずつやると長期間ではかなり効果があると言っていました。

そのほか、高名なYunus教授の発表もありました。喫煙や飲酒も線維筋痛症には悪影響を与えるようです。理由は良く分っていません。
(Muhammad B. Yunus, University of Illinois College of medicine)


11月16日記  米国リウマチ学会の報告 第2回
10月29日には本学会に先立って、線維筋痛症候群の研修会が1日中おこなわれました。もちろん、この学会では、線維筋痛症候群ばかりやっているわけではありません。その他にも同じ時間帯に、10いくつもの他の病気の研修会が他の会場で開かれてはおりました。

1番初めの基調講演はロバート・ベネット教授(Robert M. Bennet, M.D., Oregon Health Science University)が行いました。線維筋痛症候群(以下、線維筋痛症)の全般に渡る、まとまった素晴らしい講演でした。

講演者の初めのスライドでは、ダイナマイトを発明したアルフレッド・ノーベルの手記の紹介です。ノーベル賞の発案者ノーベルの手記には自分自身が押し寄せる疼痛と戦い、麻痺したような疲労感を感じて生きていた様子が書かれていました。だから彼はダイナマイトを作って痛みを吹き飛ばそうとしたのかもしれないと講演者が言ったので、会場は爆笑でした。(もし、ノーベルが生きていて、線維筋痛症に有効な治療法を考えた人にノーベル賞をあげるといったら、世界中でもっと多くの学者が研究に取り組むでしょうね。)

初めて世界で線維筋痛症の論文を発表したのはペンシルベニア大学のウイリアム・ゴーマス先生( William R. Gomers)で当時は結合織炎(Fibrositis)と呼んでいました。1904年のことです。ペンシルベニア大学は学会場のすぐ近くです。ということは19世紀からこの病気は人類に気づかれていたということですね。

診断はこのホームページの解説でお示しして入る18個の指圧点を使用し(米国リウマチ学会の分類基準)、非常に広く他の疾患との合併が多いと言っていました。線維筋痛症は関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、ライム病などのリウマチ性疾患のほか、HIV(20%に合併する)、C型肝炎、過敏性大腸炎などにも合併すると話されました。

線維筋痛症ではサブスタンスPという物質が多くなり、特殊なMRIでみるとの脳の視床とか、尾状核の血流の減少がみられ、また、大脳辺縁系の血流が増加しているなどの報告を織りまぜて話されました。前頭葉(Prefrontal cortex)から大脳辺縁系(limbic system)そして視床(Thalamus)への影響が問題となります。一般に、身体の痛みは視床から大脳皮質の体感覚野(Somatosensory cortex)へ刺激が伝わり、疼痛を感じるものと考えられています。しかし、線維筋痛症の痛みはSomatosensory cortexが感じているのではないと講演されました。線維筋痛症では、Somatosensory cortexを切除したり、そこに病気があって機能しなくても、疼痛は感じることがわかりました。結局、再び、前頭葉のprefrontal cortexに刺激が伝わり、疼痛を感じるのだそうです。

その後、下垂体から出ている各種のホルモン、ACTH,GH,TSH,LH,FSHなどに影響をあたえ、その中枢からでたホルモンがまた、末梢の内分泌臓器に影響を与え、コルチゾール、IGF-1,甲状腺ホルモン、男性ホルモン、女性ホルモンにも影響が出て、人体の各部位に異常が出るのです。

また、サイトカインのmissing linkも問題らしいとも言っておりました。各種のストレスあるいは局所の炎症などの関連から、中枢神経への影響がでるとのこと。IL-10などがかかわっているらしいとのことです。(以下続く)

(内容が専門的になってしまう場合がありますが、このニュースは一般の方の他、医療関係者も対象としています。内容によっては一般の方には記述が不親切な所もあるかもしれませんが、情報を早くお伝えする目的であることを御理解ください。後日、わかりやすく書き換えることも考えております)

ポスターセッションの会場
(Pennsylvania Convention Center)



11月6日記  米国リウマチ学会の報告 ACR2000(ACR:American College of Rheumatology)
10月29日から11月2日まで、フィラデルフィアで第64回アメリカリウマチ学会が開かれました。リウマチ学に関する一般演題2048題の他、各種の講演会、研修会、研究会が催されました。質量ともに世界でトップランクの学会です。世界各地から数千名のリウマチ学者が参加しました。演題採用率は60%とのことです。

線維筋痛症に関しての関連演題は4日間で100題を超えており、これは過去最高です。そのほか、線維筋痛症の教育研修講演(10月31日:Fibromyalgia:Advances in Understanding and Improvements in Management) には立ち見もでるほど、会場は満杯でした。1000人を超えるリウマチ学者が同一会場で、熱心に聞き入り、活発な討論がおこなわれました。

学会の開始に先立って10月28日には朝8時から夕方5時まで1日中、線維筋痛症の研修会(Evidence-Based Approaches to Managing Fibromyalgia)が開かれました。ここではアメリカの大学教授達の講議がおこなわれ、約300名の参加者があり、医師以外に研究者も参加していました。

この講習会の昼食時、韓国の医師(Dr. Lee, J.,  Pusan)と同じテーブルで食事をしました。彼女が言うには韓国には専門のリウマチ科の医師(内科)は100名程度ですが、ほとんど全員がこの病気を認めているということでした。あるリウマチ科専門病院では数百名の線維筋痛症の患者が受診していると言っていました。私がアメリカやヨーロッパでは有病率が2〜3%といわれているが、日本や韓国などアジア諸国では女性の社会進出が遅れているので、線維筋痛症の頻度はもっと多いのではないかと聞いてみました。彼女は『同感です。韓国では30から40%くらいではないでしょうか?』と驚くようなことを言っていました。

会場の雰囲気を写真でお見せしますが、アメリカリウマチ学会では線維筋痛症に、相当力をいれている姿勢がわかりました。発表者(Dr.Rhodus, N.L., Minneapolis)にアメリカの医師達はみんなこの病気に理解があるのかと聞いてみましたが、リウマチ科医師はほとんど全員この病気を扱っているが、一般の医師達への普及はまだ十分ではないと言っていました。

今後、何回かに分けて学会の内容をお伝えしたいと思います。

学会会場風景

 

線維筋痛症の研修会の会場      約千人の専門医が参加した
                      線維筋痛症講演会



10月2日記 未分化型結合組織病(UCTD)と線維筋痛症
先月、国内各地のリウマチ膠原病の研究会でも線維筋痛症に関連した演題がすこしずつ増加し、医師の間にも浸透しつつあるお話をしました。しかし、まだ、不十分な印象はあります。

以前も申しあげましたが、検査所見では異常がほとんどないか、あってもわずかのために、多くの医療関係者が首をかしげるというのがよくある図式です。

患者さんの話しをきいてみますと、関節痛のほかに、脱毛、口内炎、指が白くなるレイノー現象、日光過敏症、口や眼が渇くという、膠原病(結合組織病)の症状を訴えることがよくあります。

血液検査でも抗核抗体が陽性であったり、補体値が減少していることがよくあります。しかし、どの膠原病とも断定できないので、膠原病の専門医も膠原病ではない、とはっきり言うことが多いと思います。しかし、患者さんの”この痛みはどうしてでしょう”という、素朴ではあるけど、極めて切実な問題には、明確な解答が与えられず、医療側が困ってしまうのが実情でしょう。


抗核抗体が陰性であったり、リウマトイド因子が陰性であったりしても、膠原病に近い症状を持っている場合、未分化型結合組織病(UCTD)として経過観察する場合がよくあります。また、痛みが軽ければそのまま、経過観察だけでよいのですが、疼痛が強い場合は線維筋痛症を合併している場合が多いので、そちらの治療が優先される必要があります。
 
シドニーオリンピックも閉会しました。日本では女性陣の活躍が見事でした。女性の自己実現ができる状況が進んで来ると、こういう女性に多い疾患に、もっと世間が注目すると思います。


9月3日記   線維筋痛症とSSRI
最近、地方の研究会や学会などでも線維筋痛症候群の演題発表が増加していることが実感されます。とくにリウマチ膠原病関係の医師の間に少しずつではありますが、浸透してきていることが一因と考えられます。また、『国際雑誌などではよく見かけるが、日本にはこういう疾患が本当にあるのか』という懐疑的な意見もありますが、専門医の間では、認められる傾向にあるような感じを受けます。

もうひとつ見逃せないのは、こういう疾患にはSSRI(selective serotonin reuptake inhibitors:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が効果がみられ、治療が比較的簡単にできるようになったからとも考えられます。線維筋痛症という診断をつけなくても、かなり心因的要素が強い疼痛と判断された場合は、このような薬剤が効果があります。心療内科あるいは精神科ではよく使われています。

このSSRIは、従来、使われていた三環系抗鬱剤にくらべて、抗コリン作用、あるいは、心毒性が少なく、高齢者にも使用が比較的容易であるのが利点です。一方、効果は三環系抗鬱剤のアミトリプテリンに比べて、やや弱いと言われています。使用上の注意にも書かれておりますが、両者の併用は注意すべきとあります。ただ、患者さんによっては、SSRIのみでは不十分であるけれども、アミトリプテリンを少量併用することによって、疼痛に対する効果が増加する場合が見られます。

一方、一般に線維筋痛症には、抗炎症剤(いわゆる痛み止め)の効果が弱い場合をよく経験します。この場合もSSRIの併用により、抗炎症剤の効果が多少増強するようです。

私の経験で、この薬剤の説明が不十分な場合、『先生はこの痛みは気のせいだと思っているんでしょう!』と抗議されることがありますが、線維筋痛症の疼痛の経路を説明してあげると納得されます。誤解されたままですと、治療の効果が半減します。


8月15日記 線維筋痛症ニュース1周年

本日、この線維筋痛症のホームページは15000アクセスを超えました。
線維筋痛症ニュースは去年の8月から始めましたので、ちょうど1年が経とうとしています。この1年間、北海道から台湾まで、何十人もの方からメールや電話をいただきました。また、わざわざ、長野県外から受診された患者さんもいます。日本中で、相当数の方が他人には理解できない痛みで悩んでいることが分かりました。いただいたメールは専門医を紹介してくださいというもの、あるいは、症状を直接相談されるもの、この二つに分かれます。

前者の専門医の紹介についてですが、関西、中部、東海、関東、南東北地方の専門医の情報は分っているのですが、それ以外ではまだ、情報がありません。何科の先生でもよろしいですから、このような患者さんの診察を受け入れていただける先生がいらっしゃいましたら、E-mailをいただけたらと思います。

ご自分の名前が公表されるのは、好ましく無いという先生もいらっしゃいますので、ホームページではお名前を原則的には公表いたしません。お近くの患者さんから相談されましたら、先生のお名前を紹介いたします。また、近くに線維筋痛症の友人がいないので、友人を紹介して下さい、という患者さんにもご友人を紹介いたします。

症状を相談してこられた場合では、ほとんどの方が『ホームページの症状にそっくりであるので、どうしたらよいでしょう?』とお尋ねになります。『担当の先生にまず相談してみたらどうでしょう』と答えますが、なかなかうまく行かないこともあるようです。この病気の名前”線維筋痛症”そのものが市民権を得た名前ではありません。この辺に問題が隠されているようです。

普通の医院ではほとんどが更年期障害とか、自律神経失調症、時には運動不足とか老化によるもの、と診断されることが多いでしょう。もちろん、線維筋痛症にそれらが合併していることもありますが、高度の線維筋痛症は更年期障害にくらべて、痛みは相当なものです。痛みと歩行障害で入院される患者さんは最近1年に3〜4名います。

リウマチ膠原病外来の診療をしていますと、関節リウマチを心配して受診された患者さんのなかで、相当数の患者さんがこの線維筋痛症でした。痛みも関節リウマチと同じような痛みを訴えて受診されます。自覚的に腫れがあると言う患者さんもいます。よく見ますと指は関節リウマチのような紡錘形の腫れではありません。手の指がややむくんだように、軽い腫れがみられることもあります。これが数日続いているので、慌てて病院へ来ます。しかし、すぐに治まってしまいます。関節リウマチとされて、何年も抗リウマチ薬を飲んでいた方もいます。

午前中のこわばりが強い場合もあります。関節リウマチのこわばりの感じとはやや異なるようです。手の指、上肢、首から背部、腰部、もしくは、からだ全体がこわばるという訴えをされます。

痛み止め、抗鬱剤、ステロイド、漢方薬を使用しても、また、鍼、灸、マッサージ、運動療法、カイロプラクティックを施しても、症状が思うように良くならない場合もあります。この場合、ご自分の状態に如何に順応してゆくか、ということになります。いかなる治療法であっても、100%有効な方法はありません。風邪が直るように時間がくれば治る、というものでもありません。軽い方は数週間から数ヶ月で改善しますが、非常に症状が強く、日常生活が脅かされる大変な状態の患者さんも稀にはいます。


7月28日記  SLE(全身性エリテマトーデス)の患者さんからのメール

(近くに線維筋痛症の専門医がいないのですが・・・・・)

最近続けて、数通SLE(代表的な膠原病)の患者さんからのメールや当病院への相談が続きました。私はもともと整形外科医ですから、重症のSLEの治療は経験がありません。しかし、SLEなど膠原病に合併した線維筋痛症はかなり経験があります。
下記は関西の若い女性(20歳代)からのメールです。本人を特定できないように状況や数値を若干変えてあります。

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『数週間前から上半身が痛くなりました。なんとも表現しにくい痛みです。痛みは非常に強い日もあれば、軽い日もあります。担当医師の説明では、データからみてもSLEが悪くなってはいないようです。入院中はプレドニンを一日あたり40mg投与された時期もあります。だんだんに減らして、通院中は10mgまで減量できました。

現在、頚部から背部、股関節などが痛く、頭痛もあります。線維筋痛症なのでしょうか?痛みをとるには、ステロイドを増やさないといけないのでしょうか?他には方法は無いのでしょうか?近くには線維筋痛症の専門医がいないのですが・・・・・』



『SLEには線維筋痛症はかなりの頻度で合併します。文面から御推察すると、あなたはその疑いが高いと思います。

疼痛はステロイドの減量によって、出現する場合が多いようです。ステロイドの量の調節が問題ですね。

私はSLEの治療の専門家ではありませんが、(中等度以上のSLEは膠原病内科の医師に担当してもらいます)SLEに合併した線維筋痛症の患者さんを時々治療しています。

ステロイドは医師も患者さんも早く減量したいと思いますが、そのために全身痛(線維筋痛症)が強くなっては困りますね。担当の先生とステロイドの減量のスピードを相談したらどうでしょうか?

また、薬剤では三環系抗うつ剤の効果が、もっとも信頼できます。三環系抗うつ剤とはトリプタノールなどをいいます。副作用の問題があるので、投与するのを迷う医師もいますが、若い患者さんですと、少量(5mg ~ 10mg/日)ではそんなに心配はないですね。もしくは、副作用がかなり心配でしたら、去年、発売になったSSRIのデプロメール(ルボックスも同じです)も効果があります。

あなたの担当の膠原病内科の医師がこういう状態やその治療に難色を示すようでしたら、心療内科あるいは精神科に紹介してもらうのもいいと思います。リウマチ膠原病科と心療内科と共同で治療することになります。

貴方自身の訴えでは、憂鬱ですとか、眠れなくて困ります。という理由でいいと思います。現在、心療内科や精神科を受診することは、何も、特殊なことではないし、恥ずかしいことではありません。カウンセリング的に苦しみや、悩みを聞いてもらいながら、抗うつ剤などの処方をしてもらったらどうでしょうか?私の患者さんの中でも、かなりの方が、心療内科の治療を同時に受けています。

心療内科あるいは精神科の医師はこういう状態を経験していますので、上記の薬の処方とカウンセリングをしてくれると思います。

従って、担当の医師の信頼を損ねないように、そういう医師に紹介していただくのはどうでしょうか。

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というように、線維筋痛症を専門にしている医師が近くにいない場合は、心療内科あるいは精神科で治療を受けるのが最善でしょう。



7月12日記 線維筋痛症と抗リン脂質抗体症候群
線維筋痛症が各種の結合組織病に合併することはよく知られているというお話をしました。一方、最近注目されている抗リン脂質抗体症候群 (APS)も各種結合組織病に合併します。この抗リン脂質抗体症候群は、今年2月にスポーツ新聞の『日刊スポーツ』にも大きく取り上げていましたので、ご存じのかたも多いでしょう。

抗リン脂質抗体を持っている人は人口の1%程度ですが、これが存在しますと血栓症を起こしやすく、若い女性では流産、また、比較的若いのに、脳梗塞、心筋梗塞あるいはその他の血栓症を起こす可能性が高くなります。結合組織病がありますとより頻度は高くなります。全身性エリテマトーデスでは40%前後に存在するとも言われいます。(最近は全身性エリテマトーデスの診断基準に抗リン脂質抗体も診断の項目に入っています。)

抗リン脂質抗体症候群と線維筋痛症はどうでしょう。これも実は関連がありそうです。Medlineで調べますとやはり文献が出てきます。

最近、抗リン脂質抗体症候群を合併した線維筋痛症の年輩の患者さんを経験しました。
70歳代の男性で、10年近く前から全身の関節痛を訴えて治療していました。初診時は関節リウマチかなと考えて治療していましたが、全く関節の腫れが見られず、また、検査でも炎症の反応(CRP)が上昇してきませんでした。いわゆる、痛み止めだけでは効果が不十分なので、数年前から3環系の抗うつ剤を飲んでいただきました。その結果、疼痛は顕著に改善しました。最近、網膜中心静脈閉塞症で一時的に、視力に異常を来しました。現在はかなり回復しています。

この患者さんの血液で抗リン脂質抗体の存在を調べたところ、陽性でした。抗リン脂質抗体症候群は眼の網膜中心動静脈の血栓症も診断基準に入っています。

一般に線維筋痛症では検査結果には異常がないと言われています。また、身体障害者になることはないと言われていますが、各種の病気が基礎疾患として存在する場合があり、何らかの異常が後で出てくる場合も考えられます。

なお、関節リウマチと抗リン脂質抗体についてはリウマチ膠原病ニュースの石川医師の記事をお読みください。これからは各科で重要な問題にされるでしょう。シェーグレン症候群が基礎疾患にあっても、抗リン脂質抗体症候群が起こることがあります。

参考文献(医療関係者むけ Medlineから)

1)Chronic fatigue syndrome and/or fibromyalgia as a variation of antiphospholipid antibody syndrome: an explanatory model and approach to laboratory diagnosis. Berg D, Berg LH, Couvaras J, Harrison H Blood Coagul Fibrinolysis 1999 Oct;10(7):435-8

2)Anticardiolipin antibodies in childhood rheumatic disorders. Gedalia A, Molina JF, Garcia CO, Doggett S, Espinoza LR, Gharavi AE Lupus 1998;7(8):551-3



6月17日記 線維筋痛症を語ろう - 患者さんの会 第1回
6月2日当院の講堂で『線維筋痛症を語ろう-患者さんの会 第1回』が開かれました。
かなり遠方からもインターネットを見て来られた方もいました。講演のあと、交流会に移りました。

参加された患者さんは関節リウマチ、シェーグレン症候群、変形性関節症、あるいは脊椎症が基盤にあって、線維筋痛症を起こしている方が1/3くらいで、あとははっきりした基礎疾患がない方が2/3程度でした。

休憩をはさんでジュースを飲みながら交流会を行いました。いろいろな病院を回って、検査やレントゲンでは、何ともないと言われた話、家庭内のトラブルとか、介護の苦労、職業上の板ばさみなど、交流会で、お話しいただきました。また、当院で治療されているかたは内服薬を飲んでいる方が大半ですが、中には運動療法で大分よくなったという体験の報告もありました。

この会は大勢の患者さんがいることをお互いに分っていただくこと、また、友人を見つけていただくことなどを主旨として集まっていただきました。『次はいつやるのですか?』と終わった直後に次回の開催を期待するお声もありました。お集りいただいた方は39名でした。従業員でも痛い人がひとり参加しましたので、合計40名ですね。当院で治療されている線維筋痛症の方の約4分の1です。

長い目で見ると最悪の時より、改善されている患者さんがほとんどですが、症状は全然変わりないという方もいます。また、5月から梅雨にかけて具合が悪くなると言っておられた方もいます。6月はリウマチ月間といわれていますが、線維筋痛症の患者さんにもつらい時期ですね。

線維筋痛症を語ろう-患者さんの会 第1回
(プライバシー保護のため一部加工してあります)

線維筋痛症と結合組織病(膠原病)

線維筋痛症が各種の結合組織病に合併することは知られています。2ヶ月前に経験した例をご紹介しましょう。

30歳代の女性で、受診の1ヵ月以上前から、首や肩のほか、全身の関節の疼痛があるという訴えで当院を受診されました。お話しを聞いてみますとレイノー現象や口内炎(口腔内潰瘍)などもあるとのことです。腫れている関節はひとつもありません。しかし、四肢と体幹の線維筋痛症の指圧点は顕著に陽性でした。

早速、検査をしましたが、当日結果が出たものでは、白血球の軽度減少以外に、炎症の反応(血沈、CRP)は正常です。指先が赤いので、結合組織病のスクリーニング検査をひと通り行い、近日中に受診していただくように予約をしました。

翌日、抗核抗体や補体などの検査結果が返ってきました。かなりの異常値です。これは 全身性エリテマトーデス かもしれないと考えていましたら、数日して、発熱したと受診されました。早速、膠原病内科の医師に連絡をとり、即日入院していただきました。

つぎつぎと返ってくる検査結果では、抗SS-A抗体や抗リン脂質抗体が強陽性など異常値がいくつか出ました。リウマトイド因子も陽性でした。しかし、関節リウマチではありません。

現在は勿論、膠原病内科の医師が中心となって治療しております。
皮膚科の診察でもやはり全身性エリテマトーデスの皮疹であるこという診断でした。
現在、腎臓あるいは脳など中枢神経の検索をしているところです。

一般に線維筋痛症では検査結果には異常がないと言われています。しかし、時には各種の膠原病が基礎疾患として存在する場合がありますので、必要な検査は行うべきでしょう。

このように、痛みが主で、リウマチを心配されて受診なさった方で、全身性エリテマトーデスがみつかる患者さんは私の関係だけで、最近3〜4ヶ月に1名ほどいます。20歳代、30歳代の女性が大半です。

全身性エリテマトーデス、あるいは関節リウマチなどの、各種の結合組織病のほか、血清反応陰性脊椎関節炎などにも線維筋痛症を合併することがあります。

痛み以外にも常に全身的な見方が必要であると思います。また、以前は膠原病とは認識されていなかった、軽症の、内臓病変を合併しない全身性エリテマトーデス、あるいは、その前段階のような状態、あるいはシェーグレン症候群にも線維筋痛症は合併しますので、医療関係者は基礎疾患を疑ってみることが大切だと思います。



6月3日記 2000年日本リウマチ学会総会
先日,日本リウマチ学会総会が横浜市で行われました。 慢性疲労症候群と線維筋痛症に関する演題は3題でした。発表されたのは都内の医療センターのN先生、愛知県の総合病院のM先生、そして私です。 お二人とも以前から存じあげており、学会などでいつもご指導いただいております。

M先生は慢性疲労症候群の患者さんでは血清中のレプチン濃度が高いという内容。N先生は一次性線維筋痛症では 血液中に抗 68/48 kD抗体の出現頻度が高いという内容でした。 座長をされたN先生と会議の後でお話ししましたが、線維筋痛症が日本で十分に広まらないのは、自己抗体などがまだ見つからないことも原因のひとつかもしれない、とおっしゃっていました。お二人とも非常に多くの患者さんを診察していらっしゃいますので、ここで実名を揚げるのは差し控えます。なお、私の発表内容はフロントページからリンクしていますので、参照してください。


最近、 単行本でも線維筋痛症の記述のあるものが国内でも、徐々に増加しています。入手できた書物のなかで、まとまった記述のあるものをご紹介します。

 『EBMを活かす膠原病リウマチ診療』 メジカルビュー発行
最近日本でも注目されている、EBM(evidence based medicine)を活用した診療ということが強調されています。 インターネットを利用し、PubMedなどからMedline にアクセスし、情報を集めて、批判的に読みながら診療に活かすことが強調されています。
東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センターの大勢のスタッフの方が、病気ごとに分担執筆しています。関節リウマチ以外にも、各種膠原病のほか、抗リン脂質抗体症候群、血清反応陰性脊椎関節炎などについても数多くの文献をもとに述べられています。
線維筋痛症は赤真秀人先生がお書きになっています。膨大な文献から、最近の新しい考え方を知ることができます。診断から治療まで、リウマチ科の立場から詳しく書かれています。

  『よくわかる心療内科』 金原出版発行
心療内科と精神科ではあつかう患者さんの対象が異なります。患者さんへの問診の仕方、医療者の態度など何科の医師が読んでも学ぶことが多い本です。線維筋痛症については村上正人先生が心療内科の立場からお書きになっています。いわゆる慢性疼痛といわれている中に線維筋痛症が多いことがわかります。

 『リウマチ入門』萬有製薬 発行
これはアメリカ関節炎財団から出版されたものの訳本です。日本語版は日本リウマチ学会が編集しました。私が米国で研修したときに、リウマチ科の研修医がこの本をぼろぼろになるまで、読んでいたのが印象的でした。線維筋痛症について標準的な考え方を知るのによいと思います。


4月19日記 リウマチ膠原病センター受診のかたへ
2月に線維筋痛症ハンドブック(The Fibromyalgia Handbook, 著者はH.H.マキルウェインおよびD.F.ブルース)をご紹介をしました。一般の患者さん向けの良書です。もちろん医療関係者にも相当参考になります。この著者たちが勧めている、7段階療法(7-step Treatment)は理にかなっていると思います。私は外来で、この本の大切な部分を時々患者さんに見せて説明しています。

7段階療法は第3章から第9章までにわたって述べられています。
まずステップ1ですが、(診断がついた後)医療の開始について書かれています。ステップ2は可動性とエネルギーを増加させる毎日のエクササイズの重要性について述べられています。ステップ3は生活のストレスの除去法について。ステップ4は心の安静の助けになるアプローチについて。ステップ5は不眠からの脱却。ステップ6は回復の栄養のプラン。ステップ7は支援者を探す、です。

話は前後しますが、第1章は線維筋痛症とは?第2章は診断についてです。医療関係者が読んでもためになります。第10章はこの病気に関する質問と答え。巻末にはエクササイズの解説があります。
日常生活の全般、すなわち、睡眠、食事、入浴、人間関係、仕事、行事、天候、などすべてにおいて、注意事項が述べられており、病気と戦う勇気がわいてくると思います。とくに、毎日のエクササイズについて詳しく述べられています。

エクササイズを少しご紹介します。頚椎の可動域訓練、これができたら、続いて、頚椎の等尺性訓練に徐々に挑戦するとよいでしょう。その他、肩関節、肩甲帯の可動域訓練、ついで、腰背筋訓練です。これらは以前から腰痛体操としてよく用いられたものとかなり似ています。
これらの体操は専門の理学療法士あるいは作業療法士に相談すると教えていただけます。もちろん、医師の処方箋がないとできませんが。

ふつうの腰痛体操には無かったものはブリッジとcat-camel exerciseでしょう。これは脊椎の可動性を改善して、リラックスするのによいと思います。いずれも疼痛や疲労が強い場合は一度に進むのはよくありません。段階的にやったほうがいいでしょう。

そのほか、ウォーキングや温水プールはほとんどの線維筋痛症の患者さんにとってよい運動です。ウェイトトレーニングあるいはエアロビクスも、エクササイズが進んだ方にはよいでしょう。初めから挑戦するのはやめてください。また、カイロプラクティック、オステオパシー(整骨院)、鍼および指圧(therapeutic touch)など東洋医学についても書かれています。よく効く場合もあります。いずれにしてもチーム医療が大切です。

通して読んでみますと線維筋痛症には集学的治療が必要なことがわかります。症状が軽いうちは何とか過ごしていますが、痛みが相当強くなって来た場合は、まさに診断から治療まで系統だったものが必要となります。線維筋痛症の症状の下に自己免疫疾患や内臓疾患が隠れていることもあります。それらは検査で異常が出ます。一次性線維筋痛症は一般の検査では異常は見られません。

また、治療も抗うつ剤がよく効く人は2/3程度です。一般に抗炎症剤(痛み止め)は効果が十分では無いようです。アメリカで痛み止めに頼り過ぎて、たくさん飲んで胃穿孔を起こし、命を落とした例がインターネットに出ていました。是非、薬ばかりにたよらず、日常生活全般を見直して、エクササイズもしながら、治療することをお勧めします。


3月12日記 血清反応陰性脊椎関節炎(SNSA)と線維筋痛症
以前、線維筋痛症といわれている中にSNSAがかなり含まれているらしいという論文を御紹介しましたが、最近、まさにそれに近いケースを経験しました。

患者さんは外国から働きに来られた若い白人男性でした。診察前に、看護スタッフの報告から、多分日本という外国で働き、そのストレスから線維筋痛症になったのだろうと思い込んでおりました。日本語の通訳を介しての問診なので、うまくはかどりません。大変混んでいる外来日でしたので、私も時間を急いでおりました。もちろん、線維筋痛症の圧痛点は陽性です。

しかし、腰背部と四肢をふくめ全体的にあまり痛がるので、全身の関節のほか、仙腸関節の診察を順序にのって行うと、非常に痛がりました。レントゲンを撮影をしましたら、まさに、仙腸関節に大きな異常がみつかりました。炎症の程度を示すCRP値も中等度亢進していました。それ以後の治療は、SNSAの治療方針によっておこなうことになり、患者さんの家族を呼んで、病状と治療方針の説明を行いました。この患者さんはSNSAの中の強直性脊椎炎(AS)が考えられました。

HLA抗原を調べれはもうすこし診断が確かになるのですが、現在のところ、保険診療では測定を許可されておりませんし、自費では料金も高額なのでまだ、行なっておりません。

この患者さんは白人なので、もともとASの有病率の高い人種です。一方、日本では強直性脊椎炎(AS)は非常にすくなく、日常診療でもあまり考えなくてよい疾患のように思われて来ましたが、最近、食生活など、ライフスタイルの欧米化により、従来、日本人にはあまりないであろうと、いわれていた疾患がいろいろ増加しています。これは、医師達の注意がむけられるようになり、診断技術が上がったのも一因でしょう。HLAのなかでもHLA-B 27がこの疾患に関係が深いと言われています。

血清反応陰性脊椎関節炎には強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患合併関節炎(潰瘍性大腸炎、クローン病)、ライター症候群、反応性関節炎(咽頭炎、赤痢 Shigellaなど)、ぶどう膜炎に伴う関節炎、掌蹠膿疱症骨関節炎、ベーチェット病などがあります。いずれも、末梢関節炎も起こしますが、仙腸関節炎あるいは脊椎炎も起こすのが特徴です。

膠原病(関節リウマチを含む)とはことなり、SNSAは女性より男性に頻度が高いと言われています。若い男性あるいは女性の腰痛にはかなりの頻度でSNSAが潜在的にあるようです。
時には、胸鎖関節炎、あるいは胸骨の疼痛が強いことがあります。皮膚症状、消化器症状、そして、眼症状も関係が認められる全身疾患という見方が大切だと思います。

これらの疾患がある上に、線維筋痛症の症状がみられる場合は、両者の治療しないと患者さんはよくなったと感じないようです。


2月27日記 線維筋痛症の今後は?
最近、国内のインターネットのホームページでも線維筋痛症のページが増加して来たように思います。もちろん、米国およびヨーロッパ諸国では相当数のホームぺージがあります。Yahooあるいは、そのほかの 検索サイトに、fibromyalgiaといれてみればかなりのサイトがあるのがわかります。
アメリカでは患者さんむけにもガイドブックがあります。単行本がありますので、注文してみたらいいでしょう。 わたしも最近、Amazon.comに注文して、The Fibromyalgia Handbook  ( $13.56, Harris H. Mcilwain,M.D.  Debra F. Bruce 共著、An Owl Book, Henry Holt and Company, New York)という単行本を取り寄せました。(Amazon.com のホームページ http://www.amazon.com/ )
残念ながら、日本語では、まだ、この病気についての翻訳書も単行本もありません。

この疾患は現在、注目されつつありますので、一般むけ向けの入門書があってもよいと思います。また、リウマチ科以外では、精神医学、心療内科、および、神経内科の先生がたのなかで、最近、注意を向けていただいていることが多いようです。
私の印象では、この疾患は非常に多いのではないかと思います。短期間症状が発現する場合をいれると、かなりの人々がこの状態を起こしうると思います。
私自身の経験ですが、大きな心理的なストレスがかかったとき、数日間ひどい肩こりと腰背部痛、そして、こわばり感が出現しました。そのうえ、18ケ所の圧痛点が陽性でした。しかし、診断基準では3ヶ月以上つづくこととあります。私は1週間でよくなりましたので、確定診断にはいたりません。

また、発病年齢は30歳代から50歳代の女性が多いと言われていますが、高齢の女性にも数多く見られます。とくに変形性脊椎症あるいは変形性関節症で変形が高度の患者さんにはそれらの基礎疾患があるうえに、よけい疼痛が増幅されることがあります。
上記のThe Fibromyalgia Handbookを読んでみますと、基礎疾患として全身性エリテマトーデス、関節リウマチあるいは変形性関節症など関節炎のある病気を合併したものと、なにも合併しないものとに分類されています。

さて、線維筋痛症の今後ですが、患者さんのほか、かなりの医師達が注目してくれるのではないかと思います。線維筋痛症にかぎらず、日本の医学界では心身医学の問題は精神科とか心療内科にまかせっきりという状態が現在まで続いてきました。

21世紀は内科、外科、小児科、婦人科、整形外科などあらゆる科が心身医学の問題に直面させられるでしょう。心身医学的症状を訴える患者さんは非常に多く、精神科と心療内科の医師だけで対応できる問題ではなくなってきていると思います。あらゆる科の医師達に心身医学的配慮がもとめられる時代になりそうです。

私はこういう状況になった元には、最近の時代背景があるとおもいます。人々が訴えをオープンに言うようになったからですね。今まで、いくら病院で訴えても、血液検査では異常がないとか、レントゲンやMRIで、何も異常が写っていないから、なんともやりようがないとかいわれ、黙って、引き下がって来た多くの患者さんが、しっかりと主張を始めたからでしょう。
また、コンピューター社会の到来とともに、情報が世界中をリアルタイムで駆け巡ることにより、様々な情報が個人で入手でき、また、発信できるからでしょうね。

日本の医療制度は医療機関にとっては、出来高払いで、数をこなす医療を余儀無くされていることは、どなたも御存知ですね。一方、患者さんは平均した医療はうけられる、とはいうものの何時間も待って数分の診察を受けるのが当然と考えて来ました。
本当に重病であったり、難病であったりした場合、充分な時間をとって説明を受けられるようになったのは最近でしょう。癌など悪性腫瘍とか脳、心臓の病気、また、難病の場合には最近の医師達は充分説明をするようになりました。

リウマチ膠原病ではどうでしょうか。線維筋痛症は画像診断ではなにも写りませんし、通常の検査ではなにもでません。しかし、痛い。とても痛いのですね。

線維筋痛症の患者さんに対して、数分の診察、そして数分の説明では患者さんにご理解いただくのは不可能とおもいます。このような医療状況から、いずれは脱却しなければならない時代がやってきていると思います。

私も医療現場で毎日、40から70名(入院と外来の合計)の患者さんの診療をしています。人工関節の手術もします。また、診療以外にも、あまりに業務が多すぎて、専門を掲げたにもかかわらず、充分な診療や説明の時間がとれないのが実情です。新しい患者さん、わずか3〜4人(週当たり)の患者さんの説明を別枠でおこなうのがやっとです。

このような日本の医療環境は21世紀の中ごろまで続くのではないでしょうか。


2月11日記  慢性疲労症候群にも注目しよう
先頃、厚生省の発表で日本人の3人に1人は慢性の疲労に苦しんでいるということが新聞にでました(2/5、地方紙)。
厚生省の研究班(班長は大阪府堺市立堺病院名誉院長、木谷照夫先生)の報告です。17%が生活に支障を感じているということです。その調査は4000人を対象に郵送アンケートで実施されました。

分析できた有効回答数は3015人でした。このうち明確な原因のない人も391人(13%)とかなりの数でした。 
このすべてが慢性疲労症候群ということは極論ですが、そのうち、数パーセントは慢性疲労症候群、あるいはその予備軍かもしれません。明確な疲労の原因がある人は478人(16%)、糖尿病、高血圧症など病気のある人は209人(7%)でした。

この2月19日から20日にかけて、大阪大学で慢性疲労症候群の研究会が開催されます。科学技術庁と厚生省が後援しています。

私も線維筋痛症に非常に関係が深いこの病気に関心をもっています。今回は私自身の経験症例の報告を行い、諸先生方の御意見をお聞きしてくるつもりです。

慢性疲労症候群と線維筋痛症候群は同一の病気なのか、あるいはまったく別のものなのかは未だに議論があるところです。私がお世話させていただいている患者さんのなかにも広範囲の全身痛のほかに、非常に疲労感が強いかたもいらっしゃいます。

疲労感の強い方は是非、慢性疲労症候群のホームページも御覧ください。
WHOでも認めている病気です。

http://www.bekkoame.ne.jp/~sage-m/cfs/index.html

このホームページには上記の調査報告も出ていますし、研究会の案内もあります。


1月16日記 医療法改正の動きに関連して
本日(2000年1月13日)の新聞をみますと医療審議会が医師や看護婦数が大幅に、基準をしたまわっている医療機関にたいして、改善命令をだすという会長案が示されたと報道されていました。
 日本の医療は国民皆保険制度で、国中どこへいっても、誰がいっても、平均した医療がうけられるということで、数年前までは、世界に誇れる医療制度であるとされていました。
ところが最近、全国で医療事故が多発し、ようやく行政レベルでも対処しなければいけない、という方向がうちだされたようです。病院によっては、医療職員が十分に満たされていないという判断です。これは将来に向けた第一歩であり、みんなで見守る必要があると思います。

 線維筋痛症のホームページを作った私ですが、この疾患の患者さんを現在の医療の状況にあわせながら治療を行うのは、かなり困難があると考えております。実際、この病気の患者さんと充分に理解しあうには、かなり時間的な余裕が必要であると思います。
私自身も、診療の時間は充分にあるわけではないのですが、実際に受診された患者さんの問診と診察を行うには、相当時間がかかります
最初にしっかりと話をきいて、治療方針をたてるというのが私の方針です。
また、初診の線維筋痛症の患者さんには短時間での簡単な説明は、むしろ誤解を生みがちです。患者さんがある程度の理解をえられるまで、別に時間をとってじっくりと説明する必要があります。

 最近経験した話ですが、15年以上私が治療しているリウマチの患者さんの例です。リウマチはほとんどおさまって、腫れている関節はひとつもありません。ところが高度のシェーグレン症候群が出てきているのです。また、この10年以上、常に全身を痛がっています。以前より線維筋痛症の話をしていたのですが、全く理解されていなくて、最近ようやく、御理解いただき、薬物療法などで、症状が改善されました。
 結局、良く聞いてみたら、以前、結合織炎と私がいっていたのは覚えていらしたのですが、最近、線維筋痛症という言葉を使うようになったので、なんのことやらさっぱり分からなかったと言うのです。私にも十分責任はありますが、ある程度時間をかけて説明していてもこういう場合があります。結合織炎と線維筋痛症(正確には線維筋痛症候群)は同じです。


1月5日記 高齢のリウマチ患者さんと痛み
去年のうちに出そうと思っていましたが、書類書きなど雑務におわれて、年が明けてしまいました。介護保険法が導入され、今年2000年の4月から、実践に移されることになりました。そのための書類が山積みで、日々忙しく過ごしているわれわれにとっては、また、大変な業務です。
 関節リウマチの患者さんは介護保険法では特定疾患にあたりますので、毎週何通も依頼されます。そういう患者さんの書類を書いておりまして、かなりの方が痛みで苦しんでいる姿が思いだされました。

 常々思っていますが、高齢の関節リウマチの患者さんで検査値(赤沈、CRP)がほとんど正常であるとか、あるいは, 腫れている関節がほとんど無いにもかかわらず、かなり全身広範囲に痛がる方がいらっしゃいます。これは関節リウマチのひとつの症状と考えられていることが多いのですが、線維筋痛症の症状が増強して、苦しんでいると考えられます。
 家庭内のさまざまな変化、たとえば、配偶者に死に別れたとか、家族間の人間関係がうまくいかないとか、退院後が不安だ、など心因的な問題が相当影響していることがうかがえます。
 このような患者さんには、高齢であるため抗リウマチ薬、抗炎症剤、ステロイド剤の増量は限界があります。また、効果がないこともあります。
 まずはトリプタノール、トフラニールなどの3環系の抗うつ剤の少量投与がすすめられますが、抗コリン副作用および循環器系への問題から、増量は慎重にされねばなりません。
 こういう場合、去年発売されたSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)のフルボキサミン(fluvoxamine, 商品名:デプロメール、ルボックス)にはそのような副作用が比較的少なく、ある程度の効果がみられます。
 欧米でもかなり使われているようです。fluoxetineについては報告があります。効果はみられますが、このような薬剤を使用する場合、薬剤の相互作用についても注意をはらう必要がありあります。

 また、薬剤のみではなく、家族に対する指導も行う必要があると思います。痛みについて受容的になってあげるような家族の態度がすすめられます。また、医療関係者も『検査がこんなによいのだから痛いはずがない』というような雰囲気は慎むべきでしょう。

 一方、家族が多大な負担を強いられている場合はホームヘルパーとか、現在の福祉制度あるいは、社会資源を利用する方向で働きかけるべきでしょう。介護保険もその意味でしっかりと機能してもらいたいものです。
 実際、障害のある高齢者をかかえた家族、とくに嫁である立場の方は、皮肉なことに線維筋痛症を発病しやすいのです。